「わたしの小さな生活」・報告

墨東まち見世2011、参加企画のご報告です。
「わたしの小さな生活」という、完全予約制の体験プログラムを紹介します。実際に人が住んでいる家を参加者に解放し、そこでの生活を追体験させる企画で、すぐ予約が埋まる人気の企画となりました。
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予約メールを送ると、家に招待状が届きます。指定された時間、場所で待っていると案内人が声をかけてきます。連れられて歩くこと、約15分、その小さな家の玄関前に到着します。事務的なやりとりを数分、それが終わると、参加者は家にたった一人取り残されます。そこから一時間、何の指示もありません。ただ、その家の中で生活するだけです。
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部屋は壁がほとんどなく、開かれた様子です。暖色のライトはどこに何があるか、その形は示してくれますが、詳細までは見せてくれません。猫がいます。私が体験したその日は、4匹の猫が一階に下りていました。歩くと、キシッと板間ならではの音がします。テーブルの上に紙の束があります。「わたしの小さな生活」と題されたその紙には、物語が書かれていました。
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リノベーションされた古民家での生活感を、実体験を通じて感じさせるこの企画。体験した方にお話を聞くと、猫と遊ぶ人、物語を読む人、30分ほどで家を出る人、猫が膝の上に乗ってしまい身動きが取れず2時間ほど家に滞在することになった人など、過ごし方は様々でした。家はいくつもの「小さな生活」を包み続ける場所なんでしょうね。長い年月、そして、いくつもの家族や人を住まわせた古民家に、貴重な体験をプレゼントされる企画でした。
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〈きおくレストラン〉・報告

墨東まち見世2011、参加企画のご報告です。
EAT&ART TAROさん、住中浩史さん、鈴木真由子さんによる2つの食のアートイベントが、昭和初期古くからある旧家で開催されました。鈴木真由子さんは墨東エリアに生まれ育った地域の人。彼女にとってこの旧家は慣れ親しんだ「隣にあるおばあちゃんの家」です。
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このイベントは〈きおくレストラン〉と〈りのべカフェ〉と2部構成になっています。まず11月12日~13日に開催された〈きおくレストラン〉について紹介いたします。
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玄関をくぐると、ふすまの向こうに宴会の音が聞こえます。最初、観客はその宴会ではなく、右にある扉を通るよう指示されます。扉の先には洋間があり、なつかしい音楽が流れています。それは昭和33年の紅白歌合戦の様子でした。ふっくらとしたソファがあり、そこに座ると目の前のローテーブルに昭和33年の新聞、昭和33年のくらしの手帖が置かれています。出された飲み物はダルマウィスキーかコカコーラ。昭和33年に発売されたアーモンドチョコをかじっていると、TAROさんが登場。〈きおくレストラン〉は昭和33年の大晦日を再現していると説明をしてくださいました。平成23年と昭和33年との大きな違いは、新聞の記事で感じる事ができます。メートル法の施行、美空ひばりさんの全盛期、薬事法施行前の広告表現、原子力発電本格始動による輝かしい未来、政治、社会、芸能、文化、何から何まで、今と大きく違います。
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じっくりと時代の違いを楽しみ、すっかり昭和33年気分になっていると宴会場へと案内されます。宴会のテーブルではビール片手にちらし寿司や天麩羅を頬張る先客が。テーブルに広がる料理は茄子と鯖の煮込み、大豆の天麩羅などなど、食べたことがありそうでない素朴で懐かしい料理です。ここでもTAROさんが登場し、料理の説明をしてくださいました。全ての料理は鈴木真由子さんのご実家が、昭和33年に出していた料理なんだとか。
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〈きおくレストラン〉を体験した観客は昭和33年の記憶を、場所と料理とを通じて体験することができました。11月12日には、鈴木さんのご親戚も会場にいらっしゃったそうで、鈴木家の正月そのものになったそうですよ。