2009年にはじまったアートプロジェクト〈墨東まち見世〉4年間のエッセンスを凝縮した記録集の完成お披露目パーティーを開催! 編集部による制作秘話もご紹介します。関係者の皆様には献本をご用意してお待ちしています。
【日時】
3月28日(木)20:00〜22:00
【場所】
墨東まち見世案内所(墨田区京島3-21-9)入場料無料(差し入れ歓迎)
墨東まち見世編集塾 公開レクチャー+トーク
第3回「ドキュメントブックをつくる1」
日時:2012年9月30日(日)14:00-17:00
① レクチャー「アートプロジェクトのドキュメントを読み解く」:橋本誠(アートプロデューサー)
② トーク「読み物としての価値と活用方法を考える」:内沼晋太郎(ブック・コーディネーター)、齋藤歩(編集者)
キラキラ橘商店街の「墨東まち見世案内所」で、墨東まち見世編集部長とゲストによる公開レクチャー+トークシリーズ「墨東まち見世編集塾」の第3回「ドキュメントブックをつくる1」が開催されました。台風が迫る不安定な気候にも関わらず20人の参加者が集まり、嵐の前の静けさの中でも会場は大いに盛り上がりました。
今回は、前半のレクチャー「アートプロジェクトのドキュメントを読み解く」で墨東まち見世編集部長の橋本誠さんが全国各地で行われたアートプロジェクトの特長的なドキュメント7事例を紹介しました。
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2009」のドキュメントは会場となった場所や場所に関わる人との関係性の移り変わりを紹介。経済効果などを明記したアンケートの集計・分析結果やA3見開き2ページ分にもおよぶ関係者・関係機関の記載も特長として挙げられました。他にも、温泉地として有名な大分県・別府で今年も開催されている芸術祭「混浴温泉世界」でまちの人の声を紹介しているページや、3人のアーティストがディレクター的な立ち位置で関わった「取手アートプロジェクト2006」のモノクロページが多くを占め、記述のアーカイブが多いという特長、大阪の中之島エリア等川辺などを多く活用して開催された「水都大阪2009」の許可申請業務についてのページ、千葉大学のプロジェクト「WiCAN2011」の大解剖的な拠点の紹介、大阪・西成区を舞台とする「Breaker Project 2003-2005」の年度ごとに分けず3年間の流れでまとめている誌面構成、「KOTOBUKI クリエイティブアクション」の人の写真を中心とした誌面構成などの特長が紹介されました。
これら各ドキュメントの特長を調べることでアートプロジェクトのドキュメントの発行目的や編集方針、運営体制の必要性にも気付かされます。
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後半のトーク「読み物としての価値と活用方法を考える」はブック・コーディネーターの内沼晋太郎さんと編集者の齋藤歩さんに橋本さんを交え、ドキュメントの発行目的や編集体制を見直すトークセッションとなりました。
トークの冒頭で内沼さんが、前半のレクチャーで紹介された特長はできていて当たり前のことも多く「記録がとれていない体制は問題」とドキュメント編集での問題点を指摘されたことでトークは一気にヒートアップしました。アートプロジェクト自体の運営で忙しく、ドキュメントのディレクションができていないことや、編集に予算が割けないという課題も浮き彫りになりましたが、発行目的や誰のためのドキュメントなのかを明確にする必要があることが再確認されました。
齋藤さんも「アートプロジェクトを運営することにパワーをかけているために、記録にパワーが回らない。つまり記録の方法が確立されていないのではないか」と同調し、ドキュメント編集にプロの編集者が参画することの可能性や、あらかじめ台割や誌面構成を想定し先を予想した取材体制の必要性についても話されました。
ドキュメントの目的は、アートファンに追体験をしてもらうこと、行政に検証をしてもらうこと、これからアートプロジェクトをする人の参考書として役割、関わった人のアルバムとしての役割を果たすなど複数あり、混在していることが確認され、それらを整理して構成を考え、計画的に記録をとっていく墨東まち見世編集部の役割がとても重要であることを痛感させられました。プロの編集者の視点は、これまでのアートプロジェクトの記録の中では実践できていなかったことも多く、Web媒体の活用も含め、今後はよりプロジェクトのニーズに合ったドキュメントが生まれてくる可能性を感じさせるトークになりました。
(担当:中村祐希)
第4回は12/1に開催します!→詳細
墨東まち見世編集塾 公開レクチャー+トーク
第2回「墨東について知る」
日時:2012年9月1日(土)14:00-17:00
① 過去の資料を読み解く:曽我高明、真野洋介(向島学会)
② 墨東まち見世の現在地:ちっち+木村健世と墨東文庫編集室、「どこにいるかわからない」展実行委員(墨東まち見世2012特別企画参加者)、墨東まち見世事務局
「墨東について知る」と題された今回は、“過去”と“現在”という2つの視点から墨東エリアに迫っています。
ゲストには、“過去の資料を読み解く”編として、向島学会のメンバーで長年この地域の活動に携わってきた現代美術製作所の曽我高明さんと、東京工業大学准教授の真野洋介さん。
さらに、トーク後半の“墨東の現在地”編では、ともに「墨東まち見世2012」の公式企画である「『どこにいるかわからない』展」と「ちっち+木村健世と墨東文庫編集室」から、それぞれの企画者をお迎えして進捗状況を紹介していただきました。
9月といっても名ばかりで、立っているだけで汗が吹き出してくるこの季節。
それにも関わらず、決して広くはない墨東まち見世案内所は、20数名にもなるたくさんの方の熱気(単に体温かも…笑。)に包まれました。
墨東地域にお住まいの方、普段から墨東を拠点に活動されている方、そして初めて訪れる方・・・。
いつもとは少し趣が異なるその賑わい様に、商店街の道行く人も、不思議そうにちらちらと、時にじーっと目を止めていくようでした。
さて、いよいよトーク開始。
とその前に、このトークを機に、曽我さんと真野さんから貸していただくことになった資料について触れておきたいと思います。
トークが始まる前、数人の手と車によって運び込まれた段ボール2箱分にもなる墨東に関する資料。
書籍や雑誌、論文に当時のパンフレット・・・あまりに豊富な資料を目の前に、まずもって墨東エリアにおける活動の歴史と編集の蓄積を痛感させられました。
編集部員である私は、これらの資料が編集部の作業を救ってくれる!という期待と同時に、既にハードルが上がっているのでは・・・という何とも複雑な気持ちで圧倒されてしまいました。
最初に話をしてくだったのは、東向島の駅の近くで現代美術製作所というギャラリーを運営する曽我さんです。
現在、向島学会の副理事でもあり、墨東まち見世の事務局もされている曽我さんは、長きに渡ってこの地域に携わってきたお一人でいらっしゃいます。先代から続くゴム工業の町工場を改装して1997年にギャラリーを始めて以来、その活動は次第にもともとあったまちづくりの動きとつながりながら展開するようになったのだそうです。
木造密集地域を有することから、京島まちづくり協議会や東向島地域の一言会、まちづくり才団・川の手倶楽部など、既にまちづくりの動きが盛んであったこの地域。そうした背景に空き家を活用する建築方面からのアプローチも相まって、1998年「向島国際デザインワークショップ」を皮切りに、アートなまちづくりが広がりをみせていきました。そして2000年に行われた「向島ネットワーク」、「向島博覧会」でその動きはさらに広がり、アートとまちづくりはますますつながっていくようになりました。2002年には向島学会が設立され、その後も2003年「アサヒアートフェスティバル」への参加、2004年「向島year」、2005年以降の「墨東アートまち大学」、2007年「向島芸術計画2007」など・・・ここには書ききれないほど多様なアートプロジェクトを経て、徐々に徐々にまちにアートが定着してきたのでありました。そして、そのネットワークが活かされる形で、現在の「墨東まち見世」へとつながっていきます。プロジェクトが徐々にイベント型からプロセス型に変化してきたのも、こうした数々の経験を踏まえてのことだったそうです。
一方、「向島博覧会アートロジイ2001」をきかっけに墨東エリアで活動を続けてきた真野さんは、建築がご専門で、まさに防災まちづくりのケーススタディーを目的にこの地域に入ったお一人でした。当時から、まちを壊して建て替える防災まちづくりのあり方に疑問を抱き、それとは違う防災建築のあり方を技術的に模索していたのだそうです。そんな時にこの地域で目にしたアーティストの動きは、これまで想像しなかった刺激的なものであったといいます。空間そのものを壊すのではなく、人とつながりながらそれを生かす形で変えていく。アーティストのそんなあり方に、真野さん自身、気づかされた点も多く、まちづくりに対する視野を広げるきっかけになったと語ってくださいました。アーティストがどのようにまちを見て、空間を変えていくのか。特に、物理的な変化にとどまらず、人々がどのようにつながってその動きを繰り広げていくのかという点に強い関心を持つようになり、聞き取りやワークショップから考察・分析を重ねたのが2002年~2004年だったそうです。
その後、2005年以降もテーマを変えつつ、講座やまちあるきなどを組み合わせたワークショップを行なったり、鳩の街に拠点をおいて「鳩の街プロジェクト」に携わるなど、継続的にこの地域に関わり続けてきた経緯を教えていただきました。
曽我さんとのかけ合いの中でかつてを思い出すように広がる話題も多く、当時の熱気を想像させてくれる大変貴重な機会となりました。
休憩を挟んだ後半は“墨東の現在地”を探るべく、「墨東まち見世2012」の4つの公式企画のうち2組をお迎えし、企画内容と進捗状況をお話しいただきました。
「どこにいるかわからない」展は、八広にあるSOURCE Factoryを拠点に数々の作品を制作・発表している現代アーティストの下平千夏さんと、墨東まち見世2009にサポーターとして関わったことを契機に様々な立ち位置でアート活動を続けてきた大橋加誉さんによって運営される企画です。SOURCE Factoryと曽我さんが運営する現代美術製作所を結ぶ道中に作品を展示していくというもので、この時点で既に9組の若手アーティストの招聘が決まっているとのことでした。彼・彼女らのどんな作品が展示されるのか、そしてそれがまちとどのようなシンクロを見せてくれるのか、とても楽しみな展覧会です。
一方の「ちっち+木村健世と墨東文庫編集室」は、2010年のまち見世から「墨東文庫」プロジェクトを続けてきたアーティスト木村健世さんと、「墨東文庫・鳩の街編」の制作を機に一般参加ワークショップで立ち上がった墨東文庫編集室、そして紙芝居屋ちっちさんによって運営される企画です。「墨東文庫」とは墨東エリアに散りばめられた日常の物語を小説として見立て、文庫目録にまとめたプロジェクトで、これまでに京島エリアと鳩の街エリアでの取材をもとに2冊の文庫が発行されています。今年はその「墨東文庫」に収録されている物語を紙芝居屋ちっちさんとともに紙芝居化し、街頭での口演を行うとのこと。紙芝居化にあたっては製作メンバーを募り、ワークショップ形式で実施するそうです。まちに「文庫」として眠っていた物語が「街頭紙芝居」として生まれ変わる時、どのような空気が生まれるのか。2010年から時間をかけて紡いできたプロジェクトだからこそ見えてくるものがあるかもしれないと、期待で胸が膨らみました。
長年、積み重なってきた様々な墨東の活動に対して、3時間という時間は短すぎたかもしれません。
それでも、ゲストの方々による丁寧な説明によって、その変遷を想像し、“知った感じ”になることができたという意味で、とても貴重な時間であったと思います。
じわじわと、でも休むことなく続けられてきた墨東地域の活動。
それらが広くゆるくつながる形で積み重なり、現在のまち見世2012まで続いていることがうかがえました。
ゲストの皆さん、ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。
(担当:及川裕子)
第3回は9/30に開催します!→詳細
今年のまち見世の中で新たな取り組みのひとつである「墨東まち見世編集塾」。公開レクチャー+トークに合わせて進行しているワーキングの様子を2回分まとめてレポートいたします。
第1回ワーキング:8月19日(日)10:00~12:00
この日のワーキングの目的は編集部のチームビルディングと体制のイメージづくり。ドキュメントブックをつくるにあたり、これまでに行われてきたプロジェクトやまちについての資料などを整理しながら確認する必要性が大きく、リサーチチームを組み活動をすること、また編集塾公開レクチャーなどの企画運営、広報などの役割分担をしていくことになりました。
また、ドキュメントのコンテンツとして何があればよいか、編集部員それぞれが意見を出しあう時間も設けました。出てきたキーワードを付箋に書き、グループ分けして、どのようにまとめられそうかもトライ。「プロジェクト」「団体」「人」「拠点」など、相互に関係する要素をどのようにうまくまとめていくのか、という点が重要になりそうです。
(担当:矢野)
第2回ワーキング:9月10日(月)20:00~22:00
今回は、第2回公開レクチャー+トークを機にまち見世案内所に持ち込まれた大量の資料の整理を行いました。作業を通して「資料を分類し、関連書籍目録をつくる」「墨東まち見世年表をつくる」という当面の目標は定まりましたが、途中で「これだけの資料を細かく見始めたら、関連書籍一覧をつくるだけで終わってしまうんじゃ…」という不安がよぎったのは私だけではないと思います。
以下、行った作業をご紹介します。
1.資料の奥付にふせんを貼る
ふせんで色分けし、どこから持ち出した資料か分かるようにしました。
2.資料を分類する
「書籍コードのついた出版物」「コードのない出版物」「墨東まち見世関連」「まち見世以外のアートプロジェクト関連」「論文」などのように大まかに分けました。
3.資料の目録を作る
ドキュメントブック制作にあたって、参照する必要がありそうな資料の目録をExcelで作りはじめました。
資料は見た目の量もすごいですが、何より情報量が多く、1つ1つ内容を確認するのは根気のいる作業かもしれません。
そして何より「アートプロジェクト」や「まちづくり」など、(1日のトークを欠席したせいでもありますが)興味深い内容のものが多く目移りしてしまいました… 今後もドキュメントブック制作に貢献できるよう、墨東やアートプロジェクトについて自学自習も進めてみようと思います。
(担当:高橋りほ)
墨東まち見世編集塾 公開レクチャー+トーク
第1回「アートプロジェクトを”伝える”ツールとは」
日時:2012年8月4日(土)14:00-16:30
① レクチャー「アートプロジェクトの広報ツール事例集」
② トーク「墨東まち見世のデザインプロセス」
今年のまち見世の中で新たな取り組みのひとつである「墨東まち見世編集塾」。第1回目となる公開レクチャー+トークが先日行われ、暑い中、15名ほどの方にご参加頂きました。
はじめに、墨東まち見世の概要や、編集部および編集塾を立ち上げた経緯が編集部長の橋本誠さんから説明されました。ドキュメント制作の要となる編集部には、プロのデザイナーだけでなく普段から墨東に関わっている人にも参加してほしいそうです。また、説明の中で「部員募集には単純に人手が欲しいという意図もあります」という橋本さんの本音も聞こえてきましたが、いわば墨東まち見世初心者でありながら編集部に飛び込んでしまった私にとって、この本音には少しホッとしました。
レクチャー「アートプロジェクトの広報ツール事例集」では、アートプロデューサーとして様々な例を知る橋本さんが見てきた、様々な「よくできている」広報ツールがとりあげられました。まず、アートプロジェクトの特性を整理してみると、「会場がエリア内に点在している」「通年的に活動している場合がある」などの特性が挙げられます。そこから、アートプロジェクトの広報ツールの特性を整理してみると、「マップの活用・サインとの連携」「地域向けのツールなど制作物が多数ある」などがありました。広報ツールの事例紹介に移ると、橋本さんの収集した膨大な広報ツールを閲覧しつつ、スライドを見つつ、また違う資料が回って来てはそれを見て…アートプロジェクトに関する制作物の多さに呆然としてしまいました。中でも私が面白いと感じたのは「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」で十日町市の観光部局が作った「現地おもてなしガイド」です。これは、芸術祭の作品情報だけでなく、「ここでお茶をふるまっています」「きゅうりが食べられます」といった地域の人の歓迎の気持ちでいっぱいのガイドマップで、見ていると芸術祭で色んな人が見に来てくれることへの喜びと地元の人の盛り上がりようが伝わってきます。
USTREAMアーカイブ
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後半は、デザイナーの森垣賢さんから墨東まち見世のデザインプロセスというテーマで、墨東まち見世で使われたポスター、パンフレット、フライヤー、まちみてマップなどの広報物をデザインする上で意識したことやこだわりについて大いに語って頂きました。墨東まち見世のロゴマークのデザインプロセスを例に挙げると、イメージマップで「庶民的で若干大規模」という墨東まち見世へのイメージを固め、デザインについて「大人な印象で直線的」というデザインにしようと決めてからロゴマークのデザインに移り、線の太さや色の検討など、固めたイメージを基にさらに細かくデザインしていったそうです。墨東まち見世に関する膨大な広報物のデザインは、森垣さんのデザインする上での細かいこだわりと、予算や時間など様々な制限とのせめぎ合いの中で生み出されていました。途中、森垣さんのリサーチに基づいた「今かなりキてるフォント」のお話しが個人的にすごく面白く、時間があれば聞いていたかったです。予算などの制限があっても、その条件のなかで最高のデザインを考えようという森垣さんの情熱を感じられたトークでした。
編集部員:高橋